ナレッジ 2026.10.17

中小企業向けMAツールの選び方|導入すべき条件と費用・始め方

この記事を書いた人 武田 大 株式会社Sells up 代表取締役

中小企業向けのMAツールとは、少人数でも運用できる操作性と、月額数万円から始められる料金体系を備えたマーケティングオートメーションのことです。中小企業がMAを入れるべきかは、企業規模よりも、見込み客が継続的に増えているか、配信する情報と運用する人がいるか、営業がフォローできるかで決まります。

「MAツールは大企業向けで、うちの規模では使いこなせないのではないか」「無料や低価格のツールで足りるのか、それとも有料のツールが必要なのか」。従業員数十名から数百名のBtoB企業で、マーケティングを兼任している担当者からは、こうした迷いがよく聞かれます。

MAツールは、入れるだけで成果につながるものではありません。一方で、資料請求後のフォローが止まっていたり、過去に名刺交換した見込み客に何も連絡できていなかったりする企業では、少人数でも小さく始めることで、営業が追い切れなかった見込み客との接点を残せます。

本記事では、BtoB企業の担当者480名を対象に弊社が実施した調査の結果をもとに、中小企業にMAツールが必要かを判断する条件、選び方、費用の目安、少人数で始めるときの最初の施策を解説します。

中小企業にMAツールは必要か|企業規模別の導入率と導入しない理由

中小企業がMAツールを検討するときは、自社と近い規模の企業でどのくらいMAが使われているかを知っておくと、判断の材料になります。

従業員規模が小さいほどMAの導入率は低い

弊社がBtoB企業480名を対象に実施した調査では、MAの導入率は全体で約3割でした。企業規模別に見ると、導入率は規模が大きくなるほど高くなり、従業員10名未満では1割弱、10〜49名では1割台半ば、50〜299名では3割台半ばでした。

従業員規模 MAの導入率
10名未満 8.8%
10〜49名 15.4%
50〜299名 34.1%
300〜999名 49.0%
1,000名以上 51.4%

全体 n=480。導入率は「導入して積極的に活用している」「導入しているが十分に活用できていない」の合計。調査主体:株式会社Sells up/調査ツール:Surveroid(2026年9月)

なお、中小企業基本法では、製造業・建設業などは資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業とサービス業は従業員100人以下、小売業は従業員50人以下を中小企業としています。調査の従業員規模の区分とは一致しないため、上の表は目安として見てください。

調査の全設問と結果は、BtoB企業のMA活用実態調査(第0回)で公開しています。

導入しない理由で多いのは「必要性を感じない」

同じ調査で、MAを導入していない企業にその理由を聞いたところ、「必要性を感じない」が36.7%で最多でした。次いで「コストが見合わない」が20.5%、「社内にノウハウがない」が13.3%です(非導入者 n=346・複数回答)。

コストやノウハウの不足だけでなく、そもそも自社にMAが要るのかを判断しきれていない企業が多いことがわかります。必要かどうかは、次の章で挙げる条件に自社が当てはまるかで考えると整理しやすくなります。

中小企業でMAツールが成果につながりやすい条件

MAツールが役に立つかどうかは、企業規模よりも、商材と見込み客の状態によって変わります。従業員が少ない企業でも、次の条件に当てはまるなら導入を検討する価値があります。

商材の単価が高く、検討に時間がかかる

業務システムや設備、コンサルティングのように、問い合わせから受注まで数か月以上かかり、複数の関係者が比較や稟議を行う商材は、MAと相性がよい分野です。最初の問い合わせの時点では、すぐに導入するつもりがない見込み客も多く、その間に連絡が途切れると、比較している他社に流れてしまうためです。

1件の受注で得られる粗利が大きい商材であれば、MAで失注を1件防ぐだけでも、ツールの費用を回収できる場合があります。

見込み客が継続的に増えているのに、営業が追い切れていない

資料請求やセミナー、展示会などで見込み客が毎月増えているのに、営業がすぐに商談になりそうな相手だけに連絡し、残りは放置されている。こうした状態の企業では、MAで継続的に情報を届けることで、検討が進んだ見込み客を営業に戻せます。

保有しているリストの件数そのものより、連絡が途切れている見込み客がどれだけいるかを見るほうが判断しやすくなります。導入の時期をリード件数や体制から判断する方法は、MA導入のタイミングの判断軸で解説しています。

営業がフォローする仕組みを決められる

MAは営業の代わりに受注を取るツールではありません。見込み客の行動をもとに、営業が誰に先に連絡するかを決めるための仕組みです。通知を受けた営業が翌営業日までに連絡する、連絡した結果をどこに記録するか、といった最低限のルールを決められる企業であれば、少人数でも効果が出やすくなります。

中小企業がMAツールの導入を急がなくてよい場合

一方で、次のような状態では、MAツールを入れても配信する相手や届ける情報が足りず、費用と運用の手間だけが残りやすくなります。

  • 新しい見込み客がほとんど増えず、営業がすべての問い合わせに個別で対応できている
  • 問い合わせから数日で受注か失注かが見え、継続して情報を届ける余地が小さい
  • メールで届けられる事例や資料がなく、新たに作れる人もいない
  • ツールの設定や配信を担当する人を置けない
  • 営業が通知を受けても対応する時間がない

この場合は、MAより先に、問い合わせフォームの改善、問い合わせ直後の自動返信、顧客情報を1つの台帳にまとめること、Web広告や展示会などで見込み客を集める導線づくりを進めるほうが、成果につながりやすいです。

これはMAを使わない理由ではなく、取り組む順番の話です。見込み客が増え、配信する情報がそろってきた段階で、改めて検討すれば十分です。

中小企業向けMAツールの選び方|5つの観点

中小企業がMAツールを選ぶときは、機能の多さよりも、少人数で運用を続けられるかどうかで比べます。

見ておきたい観点は、次の5つです。

月額費用だけでなく、初期費用と最低契約期間を比べる

MAツールの料金は、月額費用に加えて初期費用がかかるものや、最低契約期間が1年のものがあります。月額が安く見えても、1年分の総額で比べると差が小さくなることがあります。

リード数・PV数・配信数の上限を見る

無料プランや低価格のプランでは、登録できるリード数やページビュー数、メールの配信数に上限があるのが一般的です。上限を超えると追加料金がかかったり、上位プランへの切り替えが必要になったりします。今の件数だけでなく、1〜2年後に増える件数も見込んで比べます。

兼任の担当者でも操作できるか

中小企業では、MAの担当者が営業やWebサイトの更新を兼ねていることがほとんどです。メールの作成、フォームの作成、配信対象の絞り込みを、マニュアルを見ながらでも担当者1人で進められるかを、無料トライアルやデモで試します。日本語のサポートや、導入時の設定支援があるかも比べておきます。

今使っている顧客管理の仕組みとつなげられるか

顧客情報をスプレッドシートで管理しているのか、CRMやSFAを使っているのかで、選ぶツールは変わります。すでにSalesforceやHubSpotのCRMを使っているなら、それと連携できるかが最初の条件になります。営業が普段見ている画面で、見込み客の行動を見られるかどうかも確かめます。

使う機能を絞って始められるか

スコアリングや複雑なシナリオは、最初から使う必要はありません。メール配信とフォーム、営業への通知だけで始め、運用に慣れてから使う機能を広げられるツールのほうが、少人数でも止まりにくくなります。

中小企業が料金で確かめる3つの点

MAツールの料金を比べるときは、月額料金の前に次の3つを見ておきます。

1つ目は、無料プランの上限です。登録できるリード数やページビュー数、フォーム数に上限があり、超えると有料プランへの切り替えが必要になることがあります。

2つ目は、最低契約期間です。有料プランでは1年間の契約が条件になっているツールがあり、その場合は途中で使うのをやめても、残りの期間の費用がかかることがあります。

3つ目は、初期費用です。月額とは別に、契約時に初期費用がかかるツールがあります。

無料で始められる3つのツールについて、各社の公式ページに掲載されている内容をまとめました。料金や条件は変わることがあるため、契約前に各社の公式ページで最新の内容を見ておいてください。

ツール 無料で使える範囲 有料プランに移るときの条件
BowNow FREEプラン0円。リード数100まで、約50,000PVまで、フォーム1つ、配信数に上限あり FREE以外のプランは最低利用期間1年。有料プランの月額は公式ページに記載なし(資料で案内)
List Finder フリープラン月額0円・初期費用0円。登録顧客100件まで、PVは500セッション分まで、ユーザーID 1つ ライトは初期費用100,000円・月額45,000円。顧客データ数とPV数に応じた従量課金あり
HubSpot 無料のCRMツールから使い始められる Marketing Hub Starterは1シートあたり、年額払いで月840円、月額払いで月2,400円。上位のProfessionalは必須の導入支援費用がかかる

BowNowとList Finderのフリープランは2026年10月17日、それ以外は10月12日に各社の公式ページを見た内容です。HubSpotの料金ページには税込・税別の表記がありません。

名前がよく挙がるHubSpotとAdobe Marketo Engageでは、始め方が異なります。HubSpotは無料のCRMツールから使い始め、必要になった段階でMarketing Hubを加える進め方ができます。Adobe Marketo Engageは料金が公式ページで公開されておらず、個別の見積もりになります。どちらを候補にする場合も、兼任体制で初期設定と日々の更新を誰が担うかまで見ておきます。

ほかのMAツールの料金一覧と、初期設定を外部に頼む費用や担当者の工数を含めた年間の総費用の見積もり方は、MAツールの費用・料金相場と総費用の見積もり方で解説しています。

少人数でMAを始めるときに最初に取り組む3つの施策

施策を考える前に、導入の進め方を小さく区切ります。まず、名刺や問い合わせ、商談の履歴を1か所に集め、配信してよい相手と配信しない相手を分けます。次に、資料請求後に送るメール、営業に知らせる条件、営業が連絡した結果を残す場所を決めます。そのうえで、最初の配信対象を狭くして始め、反応と営業の対応結果を見ながら、対象やメールの本数を広げます。

少人数でMAを動かすときは、最初から多くの施策を並べず、効果が見えやすいものに絞ります。

最初に取り組みたい施策は、次の3つです。

資料請求・問い合わせのあとのフォロー

資料請求や問い合わせのあと、資料を送って終わりにせず、数日おきに関連する事例や選び方の情報を2〜3通届け、最後に個別相談を案内します。問い合わせやデモの申込みがあった時点で営業に通知し、営業が連絡したら自動メールを止めるか、別の配信に切り替えます。営業が対応したあとも同じ案内が届き続けると、見込み客に社内で情報が共有されていない印象を与えてしまうためです。

見込み客の行動を営業へ通知する

問い合わせフォームの送信、資料請求、料金ページの閲覧など、営業が連絡するきっかけになる行動を1〜3つに絞って通知します。条件を増やしすぎると通知が多くなり、営業が見なくなります。

ただし、料金ページを見たからといって、購入を決めたとは限りません。通知は、営業が誰に先に連絡するかを決める材料として使い、検討状況は会話で聞き取ります。営業へ渡す基準の決め方は、営業へ渡すリードの基準の決め方で解説しています。

連絡が途切れた見込み客に、もう一度情報を届ける

半年以上連絡を取っていない見込み客や、過去に失注した見込み客に、新しい事例や課題の解説を1〜3通届けます。反応があった人だけを営業に戻し、反応がない人は配信の頻度を下げます。全員に営業が電話するより、少人数の体制に合ったやり方です。

ノウハウがない中小企業がつまずきやすい点

MAを導入したあとも、運用が止まってしまう企業は少なくありません。弊社の調査では、MAを導入している企業のうち、すべての機能を活用して商談・売上に貢献していると回答した企業は約3割で、一部の機能だけを使っている企業が約6割でした。

導入企業が感じているつまずきは、「社内にノウハウがない」が39.6%で最多で、「営業との連携が取れていない」が34.3%、「費用対効果が見えない」が33.6%と続きます(導入者 n=134・複数回答)。担当者が少ない中小企業ほど、ノウハウが1人に集まりやすく、その担当者が異動すると運用が止まりやすくなります。

対策としては、配信の設定やメール文面、営業へ渡す条件を、担当者以外も読める形で残しておくことです。社内にノウハウを残す進め方は、MA運用のノウハウを社内に蓄積する方法で解説しています。

外部の支援を比べるときは、対応できるツール名だけでなく、初期設定後の運用の引き継ぎ、営業との連携まで支援の範囲に入るか、毎月どの指標を一緒に見るかを見ます。

社内だけで進めるのが難しい場合は、初期設定や最初のシナリオづくりだけを外部に頼み、運用は社内で続ける進め方もあります。支援会社の選び方は、MA運用支援会社の選び方で紹介しています。

少ない体制からMAを始めた支援事例

マーケティングの経験者が少ない状態からMAの運用を始めた、弊社の支援事例を紹介します。いずれも中小企業に限った事例ではありませんが、少人数で始めるときの進め方として参考になります。

株式会社CLUE様:指標を2つに絞ってから始めた

株式会社CLUE様は、2019年時点で社内にマーケティングの経験者が一人もいない状態でした。まずKPIの設計から始め、ターゲットの属性に合うリード数と商談獲得数の2つを指標にしました。

Account EngagementとSalesforceを導入し、3日連続でサービスページを訪れているユーザーを検知して、インサイドセールスへ自動で連携する仕組みをつくっています。見る指標と営業へ渡す条件を先に絞ったことで、少ない体制でも運用を続けられました。

事例の詳細は株式会社CLUE様の支援事例で紹介しています。

株式会社SmartHR様:運用経験者がいない状態から約1か月で最初の配信

株式会社SmartHR様は、Account Engagementを導入したものの、社内に運用経験を持つマーケターがおらず、初期設定に悩んでいました。2023年7月から初期設定を始め、約1か月で最初のメルマガを配信しています。メール文面は初期の1〜2パターンから20〜30パターンまで、少しずつ増やしました。

最初から完成形をめざさず、1通目を早く出してから広げたことが、運用を止めずに続けられた理由の1つです。事例の詳細は株式会社SmartHR様の支援事例で紹介しています。

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

相談してみる →

まとめ

中小企業にMAツールが必要かどうかは、企業規模だけでは決まりません。商材の単価が高く検討に時間がかかる、見込み客が増えているのに営業が追い切れていない、営業がフォローするルールを決められる、という条件に当てはまるなら、少人数でも小さく始める価値があります。

反対に、新しい見込み客がほとんど増えていない、配信する情報や担当者がいない場合は、MAより先に、問い合わせの導線や顧客情報の整理を進めるほうが成果につながります。

ツールを選ぶときは、月額費用だけでなく初期費用と最低契約期間、リード数や配信数の上限、兼任の担当者でも操作できるか、今の顧客管理とつなげられるか、機能を絞って始められるかを比べます。導入後は、資料請求のあとのフォロー、営業への通知、連絡が途切れた見込み客への配信の3つから始め、運用に慣れてから施策を広げていきます。

よくある質問

中小企業でもMAツールを導入する意味はありますか?

あります。商材の単価が高く、問い合わせから受注まで時間がかかる企業や、見込み客が増えているのに営業が追い切れていない企業では、少人数でもMAで接点を持ち続ける意味があります。一方で、新しい見込み客がほとんど増えていない場合は、先に見込み客を集める導線づくりを進めるほうが成果につながります。

無料で使えるMAツールはありますか?

あります。BowNowのFREEプランやList Finderのフリープランのように、無料で始められるプランがあります。ただし、登録できるリード数や配信数、フォームの数などに上限があるため、件数が増えたときにどのプランへ移ることになるかも、あわせて見ておきます。

中小企業がMAツールにかける費用の目安はどれくらいですか?

ツール代は、無料プランから月額数万円、多機能なツールでは月額10万円を超えるものまで幅があります。中小企業では、月額の金額に加えて契約の条件も確かめておきます。有料プランの最低契約期間が1年の場合、途中で使うのをやめても残りの期間の費用がかかることがあります。無料プランから始める場合も、上限に達したときに移るプランと、その初期費用・契約期間を先に見ておくと、あとで費用が想定より増えるのを防げます。

専任の担当者がいなくてもMAツールは運用できますか?

兼任の担当者でも運用できます。その場合は、資料請求のあとのフォロー、営業への通知、連絡が途切れた見込み客への配信の3つに絞って始め、スコアリングや複雑なシナリオは後回しにします。担当者が1人だけだと運用が止まりやすいため、設定や配信の条件を記録として残しておきます。

MAツールとCRMはどちらを先に導入すべきですか?

顧客情報が営業の個人ファイルや名刺管理に散らばっている場合は、先に顧客情報を1か所にまとめる仕組みを整えるほうが進めやすくなります。顧客情報がまとまっていれば、MAで配信する相手を絞りやすく、営業へ通知したあとの結果も記録できます。

中小企業の定義は何ですか?

中小企業基本法では、製造業・建設業・運輸業などは資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下、サービス業は資本金5,000万円以下または従業員100人以下、小売業は資本金5,000万円以下または従業員50人以下の企業を中小企業としています。

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株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。デジタルマーケティングエージェンシーを経て2023年に株式会社Sells upを設立。戦略設計・KPI設計を起点に、リードジェネレーション、ナーチャリング、MA/SFA活用、営業連携までBtoBマーケティングを一気通貫で支援。KGI逆算のKPI設計やリードスコアリングの統計的設計、営業連携SLAの構築を強みとし、業界・規模を問わず100社以上に提供。Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。
保有資格Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop Specialist
専門領域BtoBマーケティング/リードジェネレーション/リードナーチャリング/マーケティングオートメーション/HubSpot導入活用支援/Account Engagement導入活用支援/Marketo活用支援/インサイドセールス/統計解析によるスコアリング設計/商談化率向上/マーケティングROI改善