失注した案件にいつ再アプローチするかは、失注からの日数で一律に決めるのではなく、失注時に記録した理由と次の検討時期、そしてその後のデータに表れる変化(Webサイトへの再訪、担当者の交代、予算の時期など)から考えます。そのためには、失注を「終わった案件」として扱うのではなく、再開の条件と時期を持った記録として残しておくことが前提になります。
失注した案件の多くは、課題がなくなったのではなく、予算や時期、社内の事情で「今は進められない」と判断されたものです。ところが失注理由が「価格」「タイミング」といった短いメモだけで残されていると、どの案件を、いつ、何をきっかけに再開すればよいのかが分からず、そのまま埋もれていきます。
本記事では、失注した案件が再開されないまま埋もれる理由、失注時に残す記録、再アプローチの時期をデータから考える方法、MAでの失注リードの扱い方、再アプローチを控える場合を解説します。
なぜ失注した案件は、再開されないまま埋もれるのか?
多くの場合、再開に必要な情報が記録として残っていないためです。
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失注の理由が自由記述で、人によって書き方が違い、集計や抽出ができない
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「来期に検討」などの時期が、日付の入った項目として残っていない
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失注した案件の担当者が異動・退職し、経緯を知る人がいなくなる
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MAとSFA・CRMで失注の状態が共有されず、マーケティングからは他のリードと区別がつかない
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失注した会社が再びWebサイトを見に来ても、誰も気づかない
失注の理由を営業担当者の見立てだけで記録すると、実際の理由とずれることがあります。理由は選択式にしたうえで、必要なら顧客に聞いて確かめ、後から見直せるようにしておきます。
失注したときに、何を記録しておけばよいか?
再開の判断に使えるよう、次の項目は選択式や日付の項目として残しておきます。
| 項目 | 記録の例 | 再開に使う場面 |
|---|---|---|
| 失注の理由(主な理由を1つ選ぶ) | 予算がつかない、時期が早い、他社を選んだ、要件が合わない、社内の優先順位が変わった、連絡が取れなくなった | 理由ごとに再開の時期ときっかけを分けて考える |
| 理由の補足 | どの機能・条件が合わなかったか | 次の提案で何を変えるかを決める |
| 次の検討時期 | 年月、または「来期の予算策定前」など | 連絡する時期を決める |
| 他社を選んだ場合の製品名と契約の更新時期 | 分かる範囲で | 更新の前に見直しの材料を届ける |
| 関わった人と役割 | 決める人、使う部署、窓口の担当者 | 担当者が代わっても経緯をたどれる |
| 今後の連絡についての相手の意向 | 案内は可、一定期間は不要、連絡不要 | 連絡してよいか、いつまで控えるかを決める |
SalesforceやHubSpotには、失注の理由を記録する項目が用意されており、失注に変えるときに理由の入力を必須にする設定もできます。項目名よりも、選択肢と必須にする条件を自社で決めておくことが大切です。
再アプローチの時期は、データからどう決めればよいか?
時期は、失注の理由ごとの起点と、その後のデータに表れた変化の2つで決めます。
失注の理由ごとに、再開の起点を決める
| 失注の理由 | 再開の起点の例 |
|---|---|
| 予算がつかない | 相手の予算を決める時期の少し前 |
| 時期が早い | 記録した次の検討時期の少し前 |
| 他社を選んだ | 他社製品の契約の更新時期の前 |
| 社内の優先順位が変わった | 組織の変更や新しい責任者の着任が分かったとき |
| 要件が合わない | 自社の製品やサービスで、合わなかった点が変わったとき |
「何か月後」と一律に決めるより、相手の予算や契約の周期、記録した時期に合わせるほうが、相手が検討できる時期に近づきます。
データの変化を、再開のきっかけにする
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失注した会社の人が、料金や導入事例のページを再び見ている
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同じ会社の別の人が、資料請求やセミナーの申込をした(担当や体制が変わった可能性)
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メールへの反応が、しばらく途絶えたあとで戻ってきた
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問い合わせや資料請求が、以前と違うテーマで来た
ただし、ページを見たことだけで再検討を始めたと決めつけることはできません。見た内容と以前の失注の理由を照らし合わせ、営業が状況を確かめてから連絡します。閲覧の事実を相手に伝えることもしません。
失注した案件が多くなると、記録した時期とデータの変化を人が毎日見て拾うのは難しくなります。抽出は通知や仕組みに任せ、人は拾われた相手の状況を確かめて連絡するかを決めます。確かめる相手の選び方はリードの優先順位の決め方で解説しています。
失注の理由ごとに、届ける情報はどう変えればよいか?
再アプローチでは、以前と同じ提案を繰り返すのではなく、失注の理由を踏まえて「今なら何が違うか」を伝えます。
| 失注の理由 | 届ける情報の例 |
|---|---|
| 予算がつかない | 費用と効果の見積もりの材料、小さく始められる範囲の案 |
| 時期が早い | 相手の業界の動きや、検討を始める前に準備しておくこと |
| 他社を選んだ | 見直しのときに比べる観点、乗り換えの手順や期間 |
| 社内の優先順位が変わった | 新しい責任者や部署の課題に近い事例や資料 |
| 要件が合わない | 合わなかった点が変わったことの案内(変わっていなければ送らない) |
最初の連絡では、売り込みではなく、以前の検討に触れたうえで、相手の今の状況を聞く形にします。返事がないからといって、すぐに関心がないと決めつけることもしません。
文面では、以前の検討内容、今回連絡した理由、相手にお願いすることを分けて書きます。例えば「前回は予算の時期が合わなかったため、次の計画を立てる前に判断の材料をお送りします」のように、失注の理由と時期を結びつけます。Webサイトの閲覧やメールの反応を見て連絡する場合も、そのことには触れず、関連する資料や見直しの観点の案内にとどめます。
失注したリードは、MAでどう扱えばよいか?
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「失注」をひとまとめにせず、失注の理由と、連絡してよいか(案内は可、一定期間は不要、連絡不要)を別項目で持たせる
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商談中の相手と同じ一斉配信に入れたままにせず、失注の理由に合わせた情報を届ける
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営業が「連絡不要」と記録した相手を、マーケティングの配信で上書きしない
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配信停止の申し出があった相手は、どの配信からも除き、MAとSFA・CRMの両方で同じ状態にする
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商談が再開した場合は、元の失注の記録を上書きせず、新しい商談として前の経緯とつなぐ
誰が失注したリードを担当するか(営業が持ち続けるのか、マーケティングに戻すのか)と、マーケティングから営業へもう一度渡す条件も決めておきます。営業へ渡す基準の決め方はMQLの判定基準の決め方で解説しています。
本記事は失注した案件に絞っています。長く連絡のない休眠顧客全体の掘り起こし方は休眠顧客の掘り起こし方法で解説しています。
弊社調査で見る、営業データの扱いに関する声
弊社がBtoB企業480名を対象に実施した調査の自由回答には、「営業データが担当者に属人化し、部門で共有されない」「見込み判定のデータと、営業担当者の肌感覚が一致しない」といった回答(要約)がありました。MAを導入している134名のうち、CRM・SFA連携を運用できていると答えた割合は23.1%でした(複数回答)。回答者の認識を集計したもので、失注案件の扱いを直接測ったものではありません。
出典:弊社「MA活用実態調査(第0回)」。調査主体:株式会社Sells up/調査ツール:Surveroid(2026年9月、n=480)。詳細は調査レポートをご覧ください。
なお、失注した案件に再アプローチし、受注に戻る割合について、調査の方法や母数が示された公開データは見当たりません。自社で、失注の理由、再接触の有無、再び商談になったか、受注したかを同じ定義で記録し、理由ごとに見ていきます。
見るときは、分母を分けておきます。例えば、再び商談になった案件のうち受注した割合と、失注したすべての案件のうち受注まで戻った割合は、同じ「再受注率」と呼ばれることがありますが、数字はかなり違います。
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再接触できた割合(失注したすべての案件が分母)
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再び商談になった割合(再接触できた案件が分母)
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再び商談になった案件のうち受注した割合
理由ごと、失注からの期間ごとにこの3つを並べると、どの理由の案件に、どの時期に力を入れるかを見直せます。
再アプローチを控えたほうがよいのはどんな場合か?
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相手から「今後の連絡は不要」と明確に伝えられた
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配信停止の申し出があった
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要件が合わない理由が今も変わっておらず、伝えられる新しい情報がない
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短い間隔で何度も連絡しており、相手の負担になっている
このような相手には、同じ提案を何度も送るより、連絡を控えるほうが関係を損ねません。連絡しない期間と、その理由も記録に残します。
メールで再アプローチする場合、広告や宣伝にあたるメールには、送信者の名称や配信停止の方法などの表示が必要です。配信停止の申し出や「連絡不要」の記録を、どの配信よりも優先します。名刺や古いリストに送る際に確かめる点は古い名刺やリストは今から使えるかで解説しています。個別の判断は、自社の法務担当者や弁護士など専門家に確かめます。
「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために
施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。
相談してみる →まとめ
失注した案件が再開されないのは、再開に必要な理由や時期が記録として残っていないことが多いためです。失注したときに、主な理由、次の検討時期、他社の契約の更新時期、関わった人、今後の連絡についての意向を、選べる形や日付の項目で残します。
再アプローチの時期は、理由ごとの起点と、Webサイトへの再訪や担当者の交代といったデータの変化から決めます。MAでは失注の理由と連絡してよいかを別に持たせ、配信停止や「連絡不要」の意向を全体で守ったうえで、理由に合った情報を届けます。
よくある質問
失注してから何か月後に連絡すればよいですか?
一律の正解はありません。失注の理由と、相手の予算を決める時期や契約の更新時期、記録した次の検討時期から決めます。失注したときに、次に連絡する時期とその理由を記録しておくと迷いません。
他社に決まった案件にも、再アプローチしてよいですか?
相手が連絡を望んでいなければ、契約の更新時期の前などに、見直しの材料になる情報を届けるのは一つの方法です。ただし、他社の製品に不満があると決めつけず、現状を尋ねる形にします。
失注した相手がWebサイトを見に来たら、すぐに連絡すべきですか?
見たページと以前の失注の理由を照らし合わせてから決めます。見に来たことだけで再検討を始めたとは限らないため、閲覧の事実には触れず、役に立つ情報の案内から始めます。
