ナレッジ 2026.10.25

AIエージェントを営業・マーケティングに使うと何を任せられるか

この記事を書いた人 武田 大 株式会社Sells up 代表取締役

AIエージェントを営業・マーケティングに使うとき、任せやすいのは、データを集めて並べ、条件に当てはまる相手を見つけ、次の行動の候補と下書きを出すところまでです。誰に連絡するか、何を伝えるか、価格や契約をどうするかの最終的な判断と、顧客への連絡の送信は、人が確かめてから行う形にしておくと、誤った判断が顧客に届くのを防げます。

MAやSFAには毎日データがたまりますが、それを見て次の行動を決める作業は人手に頼っていることが多く、リードが増えるほど追いきれなくなります。AIエージェントはこの作業の一部を引き受けられる一方で、任せる範囲を決めずに入れると、根拠の分からない提案や誤った連絡につながります。

本記事では、AIエージェントと生成AIのチャットやRPAとの違い、営業・マーケティングで任せられることと人が判断すること、導入前に整えること、任せる範囲を広げていく手順を解説します。

AIエージェントは、生成AIのチャットやRPAと何が違うのか?

AIエージェントは、与えられた目的に向けて手順を組み立て、複数のツールやデータを使いながら作業を進め、結果を見て次の動きを選ぶ仕組みです。

種類 手順を決めるもの 得意な作業 苦手な点
生成AIのチャット 人がその都度指示する 文章の下書き、要約、案出し 自分からシステムを操作して作業を終わらせることはしない
RPA 人が事前に決めた手順 決まった画面操作やデータの転記 画面の変更や例外、判断を伴う作業
AIエージェント 目的に応じてAIが組み立てる 複数のデータやツールをまたぐ、手順が毎回少しずつ違う作業 誤った判断や結果のぶれ、権限と記録の管理

製品名に「AIエージェント」と付いていても、中身はチャットボットや、決められた手順を自動化したものにとどまる場合があります。調査会社のGartnerは、既存の製品をエージェントと呼び直す動きを「エージェント・ウォッシング」と呼び、2027年末までにエージェント型AIのプロジェクトの40%超が、費用の増加や価値の不明確さ、リスク管理の不足によって中止されるという見通しを公表しています(Gartner、2025年6月25日)。見るべきなのは名前ではなく、何を自動で行い、どこで人が確かめるのかです。

営業・マーケティングで、AIエージェントに任せられることは何か?

任せやすいのは、量が多く毎日発生し、仮に間違えても人が気づいて直せる作業です。

  • MAやSFAのデータから、Webサイトへの再訪やメールへの反応など、前回から変化のあったリードを毎日拾う

  • 拾ったリードについて、見たページや過去の接点、商談の履歴を1か所にまとめる

  • 決めておいた条件に沿って、連絡の候補と優先順位を出す

  • 連絡するときのメールや電話の要点の下書きを作る

  • 営業が記録した結果を集計し、条件に当てはまった相手のうち商談になった割合を出す

営業で使う場合は、前日から動きのあったリードを拾い、会社の情報、見たページ、過去の接点、商談の段階をまとめて、連絡の候補と話す要点を出す使い方が合います。マーケティングで使う場合は、反応が増えた層、よく読まれているコンテンツ、反応のない相手を拾い、次に配信する候補や営業に知らせる候補を出す使い方が合います。

どれも、データを見る作業と、判断の材料をそろえる作業です。リードが数十件なら人の目でも追えますが、数千件になると毎日すべてを見るのは難しくなります。この部分を仕組みに任せると、人は拾われた相手の状況を確かめて、何をするかを決めることに時間を使えます。

連絡の候補の選び方はリードの優先順位の決め方で解説しています。

人が判断したほうがよいことは何か?

判断の根拠を相手や社内に説明する必要があるもの、判断を誤ったときの影響が大きいもの、データに表れない事情が関わるものは、人が決めます。

  • 顧客へ実際にメールを送る、電話をかけるといった、相手に届く行動

  • 価格、値引き、契約の条件、納期など、約束になる内容

  • 重要な顧客や商談中の相手への対応

  • リードの行動をどう読むか。料金ページを見たことは関心の手がかりにはなりますが、購買意向を決めつける材料にはなりません

  • 連絡の条件そのものを変えるかどうか

AIエージェントが出した候補や下書きは、そのまま使わず、人が状況を確かめてから使います。行動データには、検討している本人以外の閲覧や、セキュリティ製品による自動的なクリックが混ざることもあるため、データの読み違いを前提にした確かめ方を決めておきます。

弊社調査で見る、MAでのAIの使われ方

弊社がBtoB企業の480名を対象に行った調査では、生成AIの活用について「積極的に活用し効果が出ている」が12.7%、「一部で試験的に活用している」が22.1%、「検討中」が17.1%、「活用していない」が48.1%でした。MAを導入している134名に、運用できている機能を聞いた設問(複数回答)では、「AI・予測機能」が33.6%で、「営業への通知・トスアップ」の61.2%を下回りました。回答者の認識を集計したもので、活用の深さや効果を測ったものではありません。

出典:弊社「MA活用実態調査(第0回)」。調査主体:株式会社Sells up/調査ツール:Surveroid(2026年9月、n=480)。詳細は調査レポートをご覧ください。

AIエージェントを入れる前に、何を整えればよいか?

AIエージェントが出す候補は、元になるデータと条件の質に左右されます。入れる前に、次の点を整えておきます。

  • リードと顧客の情報に重複や表記のゆれが少なく、同じ相手が1つにまとまっている

  • 営業へ渡す条件と、渡したあとに誰がいつまでに何をするかを決めてある

  • 営業が連絡した結果を、選べる項目で記録している

  • AIエージェントが読めるデータと、書き込める範囲(権限)を決めている

  • 何が良くなれば成功とするか(連絡までの時間、商談になった割合など)を決めている

リードや会社の重複・表記ゆれの整理の仕方はリードや会社の重複・表記ゆれの整理の仕方で解説しています。

結果が記録されていないと、AIエージェントの候補が当たっていたのかを確かめられず、条件を見直せません。リードから商談までのどこで止まっているかの見つけ方はリードが商談にならないときの止まる場所の見つけ方で解説しています。

AIエージェントに読ませるデータと権限は、どう決めればよいか?

読ませるデータは、任せる作業に必要なものだけに絞り、書き込みは段階を分けて許可します。

データ・操作 始めの段階 結果が安定してから
MA上の行動記録(閲覧ページ、メールの反応、フォーム送信) 読む 読む
SFA・CRMの会社と担当者の情報、商談の段階 読む 読む
営業が記録した連絡結果 読む 読む
社内への通知、要約やメモの作成 人が確かめてから使う 自動で書き込む
CRMの項目の更新 行わない 決めた項目だけに書き込み、記録を残す
顧客へのメール・メッセージの送信 行わない 人の承認を経て送る

メールの本文や商談メモなど、個人に関する情報や取引条件を含むデータを読ませるかどうかは、利用するツールのデータの扱いと社内の規程を確かめてから決めます。誰がいつ何を変えたかを後から追えるよう、AIエージェントの操作は記録に残します。

任せる範囲は、どう広げていけばよいか?

最初は人がすべて確かめる形で小さく始め、結果を見ながら任せる範囲を広げます。

Step.1:任せる作業を1つ決めます。例えば「前日に変化のあったリードを拾い、要約を毎朝届ける」のように、相手に何も送らない作業から始めます。

Step.2:読めるデータと書き込める範囲を決め、AIエージェントの操作を記録として残します。

Step.3:出てきた候補と要約を人が確かめ、使ったもの・使わなかったものと、その理由を残します。

Step.4:数週間〜数か月の結果を見て、候補がどれくらい当たっているか、人の作業時間がどう変わったかを確かめます。

Step.5:当たり方が安定した作業から、下書きの作成、社内への通知など、次の作業へ広げます。顧客への送信は、最後まで人の承認を残すことを基本にします。

LisCoreは、MAやSFAにたまるデータの変化を毎日読み取り、確かめる相手と次の行動の候補を出すことをねらいに、自社開発しているツールです。

AIエージェントを急いで入れなくてよいのはどんな場合か?

今のMAで、条件に応じたリスト抽出、メール配信、営業への通知まで回せているなら、AIエージェントを足さなくても足りる場合があります。検討するのは、複数のツールの情報を毎日見比べている、あらかじめ用意したシナリオでは拾えない例外が多い、候補に理由を文章で添えたい、といった作業が増えてからです。次のような場合も、急ぐ必要はありません。

  • リードが少なく、担当者が毎日すべてを見て判断できている

  • リードの情報が担当者ごとのファイルに分かれていて、まとまっていない

  • 営業へ渡す条件や、渡したあとの対応を決めていない

  • 連絡の結果が記録されておらず、候補が当たったかどうかを確かめる手段がない

この段階では、AIエージェントを入れる前に、データをまとめ、条件と記録の仕方を決めるほうが成果につながりやすくなります。生成AIを文章作成などに使う場面と注意点は生成AIのBtoBマーケティング活用で解説しています。

「やっているのに成果が出ない」状態から抜け出すために

施策を続けているのに商談が増えない、リードの質が上がらない。こうした課題の多くは、戦略と施策のつながりが設計されていないことが原因です。Sells upは現状の分析と改善の優先順位整理から支援します。

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まとめ

AIエージェントに任せやすいのは、データを毎日見て、変化のあった相手を拾い、判断の材料と下書きをそろえる作業です。顧客に届く連絡、価格や契約の条件、行動の読み方、条件の変更は、人が確かめてから決めます。

入れる前に、データをまとめ、営業へ渡す条件と結果の記録を決めておきます。相手に何も送らない作業から始め、結果を見ながら任せる範囲を広げると、誤った判断が顧客に届くのを防ぎながら、毎日の作業を減らせます。

よくある質問

AIエージェントに「今日誰に連絡すべきか」を決めてもらってもよいですか?

候補を出すところまでは任せられますが、実際に誰へ連絡するかは人が確かめて決めます。候補には、なぜその相手を選んだのか(再訪した、資料を見た、など)の根拠を添えてもらうと、確かめやすくなります。

AIエージェントに顧客情報を読ませても問題ありませんか?

読ませる前に、利用するツールのデータの扱い(学習に使われるか、保存先はどこか)と、社内の規程や顧客との契約を確かめます。読めるデータの範囲は必要なものに絞り、操作の記録を残します。

生成AIのチャットとAIエージェントは、どちらから始めればよいですか?

文章の下書きや要約など、人が指示してその場で結果を確かめられる作業なら、生成AIのチャットから始めるほうが手軽です。毎日のデータの見直しのように、同じ作業を日々行い、複数のツールをまたぐ作業が負担になっている場合に、AIエージェントを検討します。

AIエージェントの効果は、どう測ればよいですか?

導入前に、連絡までにかかる時間、担当者がデータを見る時間、候補のうち商談になった割合など、変えたい指標を決めて記録しておきます。導入後に同じ指標で比べますが、時期によってリードの数や質も変わるため、数か月の幅で見ます。

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株式会社Sells up 代表取締役
武田 大
株式会社AOKIにて接客業、株式会社リクルートライフスタイル(現:株式会社リクルート)にて法人営業を経験後、株式会社ライトアップでBtoBマーケティングを担当。デジタルマーケティングエージェンシーを経て2023年に株式会社Sells upを設立。戦略設計・KPI設計を起点に、リードジェネレーション、ナーチャリング、MA/SFA活用、営業連携までBtoBマーケティングを一気通貫で支援。KGI逆算のKPI設計やリードスコアリングの統計的設計、営業連携SLAの構築を強みとし、業界・規模を問わず100社以上に提供。Account Engagement SpecialistおよびTableau Desktop SpecialistのSalesforce認定資格を保有。
保有資格Salesforce Certified Marketing Cloud Account Engagement Specialist/Tableau Desktop Specialist
専門領域BtoBマーケティング/リードジェネレーション/リードナーチャリング/マーケティングオートメーション/HubSpot導入活用支援/Account Engagement導入活用支援/Marketo活用支援/インサイドセールス/統計解析によるスコアリング設計/商談化率向上/マーケティングROI改善